ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2020.12.17 23:55

情が干からびた人々

アビガンは、どうやら「有効性を判断するのは困難」
とのことで、国の審査報告書がまとまったらしい。
「新型コロナ治療薬の選択肢が限られていることを考えると、
承認は社会的に一定の意義がある」という、薬品審査としては
きわめて非科学的な意見も出ているらしいが、
根本的に、治験の方法や手順に問題があり、
承認すべきでないという見解が内部の専門家から出ているようだ。
アビガンを、テレビで激推ししてきた「サイエンス」の専門家は、
自分の非科学的な発言を謝罪しなければいけないと思う。

今日は『コロ問い』の打ち上げがあり、
それぞれの病歴・検査歴・手術歴の話になり、
やっぱりコロナより怖い疾病は身近にいっぱいあるなと思った。
貝毒、ノロ、アニサキスのほうがずっと近い…。

タクシーで帰ろうかと思っていたけど、マスクをするのが
嫌だったし、腹ごなしがてら、家までゆっくり歩いて帰った。
すると駅の近くで、東南アジア系の女性が近づいてきて、
メッセージカードのようなものを差し出してきた。
「私は外国人留学生です。コロナで収入がなくなり生活に
困ってお菓子を作って売っています。どうかお願いします。
1個500円 2個1000円」
というようなことが書いてあった。
ちょっとギョッとしたけど、実はテレビで見たことがあった。
組織的に全国展開しているお菓子売り集団で、
本当に留学生なのかどうかはわからないという話だった。

だけどあやしい外国人でなくとも、
もはやマッチ売りの少女になってでも、

とにかく少しでも生きるためのお金が欲しいという状態に
追い込まれている人が、いま大勢いる状態だと思う。

経済を止めれば、経済死する人が出る。
GOTO停止は飲食・観光だけでなく、
そこに食材や飲料、酒、品物などを納品していた生産者
などにも関わってくる問題で、
なにより社会の萎縮効果につながり、
自分は直接は関係ないと思い込んでいる人々の生活にも
これから襲い掛かってくるものだと思う。
心を病み、自殺に追い込まれる女性は急増だ。
だけど、そういったことをなにも考えない、
社会と自分のつながりを、なにも感じ取らないままの人の
ほうが多数という状態になってしまった。

そして、マスコミはそれを考えさせないこと、
とにかく人の移動を止めさせること、
不都合な弱者は黙殺するという路線を徹底している。

コロナ自粛で大打撃を受け、支払いの滞った零細企業は、
一時期は、支払い猶予の制度によって何とかつないでいたものの、
この年末になり、猶予期限が切れたところに、
金融機関や取引先各所から「猶予していた分を一括で支払え」
という督促状が舞い込むようになっている。
「年を越せない」という焦りと絶望のなかで、
なんの罪もないのに、追い詰められている人が、今このとき、
この社会のなかにいるのに。

日本の社会を支えているもののなかで、「情」は、
大事な柱のひとつなんじゃないかと私は思っていた。
頭のなかで理屈を組み立てていても、
情が欠けると、物事を受け止めるということができない。
だけど、それが干からびてしまったように見える。
いや、凍りついたのか?
取り戻すには、私たちが燃え盛っていなきゃいけない。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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